絵の世界に進むことを決意

 昭和25年石巻商業高校に入学しました。在学中、K先生から毎日放課後石膏デッサンの指導を受けました「ダルマ」の絵で褒められたことがきっかけで、絵に興味を持ちましたが、K先生から指導を受けたことにより、さらに絵画への道を進むことに希望を持つようになりました。

 

恩師 K先生(石巻商業高教論)への手紙

 昭和26年以来続いた手紙の賀状は、私にとって宝物です。石商高時代の成績表は、残念な数字でした。しかし、美術、俳句、書道教育に個性豊かな会話を交え、ズウズウ弁で50分間の詩情と慈愛あふれる教育をされました。3年間まったく美術学校にいるような気持でした。

 放課後は石膏デッサン。下校時はどことなく北上川両岸をご一緒させて頂き、春の日和山、河口の突堤に、あるいは河岸の船影にみとれ、厳しい冬のひばり野に立つときも、自然との出会いを楽しまれていたような気が致しました。今はただ次から次へと思い出のみが流れています。

 先生はこれまで積み重ねられた絵画、書道、俳句を親しみ健康な精神に満ち、少しもジメジメせず羨ましいと思いました。右に左に迷う、ためらいも複雑な綾目に引っかかって悶々とするような風情もなく、張りを揃えた筆勢によって、自然を取り込みこれを爽やかに写し、少しの混じり物もなく、貫き通されたところに、先生の一筋に徹した骨があったように思うのです。この健やかな生活感の明るさを、先生の作品と共に忘れないでしょう。

 石商3年のある日、私は絵描きになる志望をしました。先生は即座に、「いい道だよ」とおっしゃいました。この一言が私の進む道になりました。

 先生と生徒。その出会いは私の人生であり、師の言葉は偉大にして、恐ろしいものだと思いました。今、絵を描く者としてこの道を歩みながら、厳しさは心しています。「ガンバラインヨ」「イイブリスンナヨ」石商在学中に得た糧は今も生きています。東京銀座松屋で中野和高の作品を見たと言われたことは何かの縁だと思います。激励を忘れない先生の心に少しでも、ご恩と感謝の念を込め幸せを大切にいたします。

 

1951年2月26日 

 高校生・日米国際親善絵画展最優秀賞 受賞

1951年9月16日

 石巻市4高校連合美術展 石巻市議会議長賞 受賞

 

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