写生地 剱崎(つるぎざき)

 最南端の剱崎周辺を歩いてみよう。私鉄の京浜急行電鉄三浦海岸駅からバスで剱崎下車、松輪下車、松輪地区の間口港までの丘陵地は三浦大根で知られる畑が続き、キャベツやスイカなど季節野菜の畑を通り小路を下ること20分、間口港の魚市場の屋根が見えてくる。昭和30年代までは東京湾の魚介類がよくとれ、大量の水揚げに港は沸き活況の時代が続いていたが、その後、漁は細るばかりで港の漁船5~60隻のうち半数以上は釣船に変身した。休日は乗合客で賑わい、磯や防波堤での釣りも楽しめる港には釣宿や民宿が多く宿をとる方はここを足場にするとよい。

 魚市場内からの港風景、陸に引き揚げられた漁船と裏山をバックに描ける。天候にもよるが釣客を乗せた船は沖に出払い港はカラッポになることもあるが、閑散とした港風景もよいと思う。午後、沖から凱旋帰港する船としぶき、海鳥の舞う光景や磯の釣人も絵になる。間口港から磯づたに進むと間もなく太平洋に浮ぶ白い帆、沖行く外国船や大型タンカーが見えてくる。岩場の先で波が高々と岩礁に打ち上げ、奇岩、断崖の先に悠然と剱崎灯台の姿が見え感動の瞬間だ。目線を高く低く、足場を移動しながら構図を決める。この辺りの足場から見る剱崎は東側になり午前中の仕事になるが、午後の逆光は午前には見られなかった風景に変わり好きなところだ。

 剱崎の西側に移動するには岩場を飛び越えたり上がったり、下ったりで足元には十分注意が必要だ。岩場をしばらく進みながら辺りを見渡せばスケッチの二・三枚は描ける。荒々しいここの一帯は東側では想像しなかった剱崎の景観が眼前に迫り頑強な威風と存在感を見せ、堂々と険しい断崖に立つ剱崎灯台を見上げながら腰を据え存分に描ける。大作も可能だ。西日を受けた白い岩肌は眩しいほどで磯釣りの楽しめるところでもある。

 風景写生は歩き回り、四季、天候の変化にもめげず通い朝夕の空気にふれ、そして自然と一体になり描きたいと思う。何年前になるか自分を知りたく、西側から断崖と剱崎灯台を雨の日を選んで荒れる海と雨か、飛沫か、吹く風を岩場で避けながらスケッチしたことがある。心に残る感動を味わい、後日100号にまとめた思い出がある。

 

荒崎の海 F6

剱崎(東側)

剱崎(西側)

雨の剱崎灯台 F100

 

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